大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)1294号 判決 1976年2月27日
神戸市北区八多町下小名田六二九番地
控訴人
森武一
東京都千代田区霞ケ関一丁目一番地
被控訴人
国
右代表者法務大臣
稲葉修
右指定代理人大蔵事務官
岡崎成胤
同
筒井英夫
同
丸明義
同
法務事務官
中山昭造
同
田村正己
右当事者間の損害賠償請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金一〇万四〇〇〇円及びこれに対する昭和四九年一一月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え(当審において請求を減縮)。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、左記のとおり附加するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。
(控訴人の陳述)
控訴人は、訴外樫本定雄及び同湯浅芳彰に対し、本件山林売買の仲介手数料として金七〇万円を支払った。このことは、控訴人提出の証拠によって明らかである。ところが、兵庫税務署長は、控訴人より昭和四七年分所得税等の徴収をするに当り、右仲介手数料の点について何ら考慮することなく税金を納付せしめた。しかし、右仲介手数料七〇万円は、控訴人の所得からこれを控除すべきであり、そうすれば右年度分の所得税額等は、かなり大幅に減額される筈である。よって、被控訴人に対し、右所得税等の減額相当分のうち金一〇万四〇〇〇円の返却を求める。
(証拠関係)
控訴人は、甲第五ないし第八号証を提出した。
理由
当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却を免れないものと判断するが、その理由は、左記の点を附加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これをここに引用する。
控訴人の当審における追加的主張は、その趣旨必ずしも明確ではないけれども、弁論の全趣旨より忖度するに、控訴人は、同人が既になした昭和四七年度分所得税の確定申告につき、その申告内容の訂正及びそれに基づく申告税額の減額、返還を求めんとするにあるものと解されるところ、控訴人が右のような目的を達するためには、国税通則法所定の期間内に所轄税務官庁に対し同法所定の減額更正の請求をなすべきであり、控訴人が当審において縷々述べるところの事情も、その当否は別として、右請求において主張すべきものと考えられる。適式な減額更正の手続をなさずして、既になした確定申告の内容に訂正変更のあることを理由にして直ちに国に対し右変更に応じた税額の減額部分の返還を求めることは許されないものといわねばならない。控訴人の当審における追加的主張も理由がない。
よって、右と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却し、控訴費用の負担につき同法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹内貞次 裁判官 坂上弘 裁判官 諸富吉嗣)